マイホームの買い替えやライフスタイルの変化などで住まいを売却するとき、どのように進めたらいいのか分からない方も多いと思います。ここでは、不動産会社選びから引渡しまでの流れとポイントを分かりやすくまとめました。
1. 依頼する不動産会社を選ぶ
自宅を売却するとき、自分で買手を探すことも可能ですが、親戚や知人など限られた範囲にしかアプローチできず、希望価格で売れるとは限りません。
そこで、不動産会社に依頼するのが一般的です。不動産会社を利用すれば、次のようなメリットがあります。
- 広く買手を募集できる
- 売却価格や税金、取引の流れなど専門的なアドバイスが得られる
- 売却活動を代行してもらえる
信頼できる不動産会社を選ぶことが売却成功のカギとなるでしょう。また、自宅を売り出すチラシを入れてくる不動産会社があれば、その会社に既に「そのような物件を探している顧客」がいる可能性があります。
さらに、買い替え先の仲介や販売を依頼する不動産会社に同時に売却をお願いすると、**「売却が成立することが購入の条件」**になるため、積極的に売却活動を行ってくれることが多いです。
2. 媒介契約の種類
不動産会社を決めたら、**「媒介契約」**を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
- 専属専任媒介契約
- 1社だけに売却を依頼し、売主本人が見つけた買手とは直接契約できない契約形態
- 不動産会社の責任が重く、売却活動に力を入れてくれやすい
- 売主に対し、1週間に1度以上の報告義務がある
- 有効期間は3ヵ月
- 専任媒介契約
- 1社だけに売却を依頼する点は専属専任と同じ
- 売主本人が見つけた買手とは契約可能(ただし、不動産会社が活動にかけた費用負担が生じる場合がある)
- 売主に対し、2週間に1度以上の報告義務
- 有効期間は3ヵ月
- 一般媒介契約
- 複数の不動産会社に売却を依頼できる
- 売主本人が見つけた買手とも契約できる
- 他の不動産会社名を開示する「明示型」と、開示しない「非明示型」がある
不動産会社は、これら3つのいずれかの媒介契約書を作成し、記名押印して依頼者(売主)に交付する義務があります。
また、媒介報酬(仲介手数料)の上限は以下のように定められています(いずれも消費税別途)。
- 200万円以下の部分:5%
- 200万円超~400万円以下の部分:4%+2万円
- 400万円超の部分:3%+6万円
3. 売却活動の流れ
3-1. 売却条件を決める
- 売出価格
- 引渡時期
- 広告方法
これらを不動産会社と相談しながら決めます。
3-2. 広告活動
- 不動産会社はインターネットや不動産会社間ネットワークなどを通じて買手を探します。
- 間取り図や外観写真、物件情報(築年数・アクセスなど)を提供して、不動産会社の広告活動に協力しましょう。
3-3. 内見(内覧)
- 広告活動の結果、興味を持った人が見学(内見)に来ることがあります。
- 内見前は部屋をきれいにして、第一印象を良くしましょう。
- 実際の案内や説明は不動産会社が行うので、売主が立ち会う場合も、購入希望者とのやりとりは基本的に担当者に任せるのが安心です。
- オープンハウスを実施し、週末などに自由に見学してもらう方法も早期売却には効果的です。
4. 契約のポイント
買手が見つかったら、売買契約を結びます。トラブルを防ぐためにも、売買契約書を作成し、売主・買主双方が署名押印して保管することが重要です。不動産会社と相談しながら、次の点に注意しましょう。
4-1. 手付金
- 宅地建物取引業者(業者)が自ら売主になる場合を除き、手付金額の上限は法律で制限されません。
- 売買価格の10%前後が一般的。
4-2. ローン特約
- 買主が住宅ローン審査に落ちてしまうと、売買契約が白紙に戻る場合があります。これを**「ローン特約」**と呼びます。
- 買主がローンを利用する際、金融機関によっては所有権移転登記や抵当権設定登記を先に行わないとお金を借りられないことがあります。そのため、売主・買主が連名で金融機関へ融資金の代理受領を依頼する手続きをすることもあります。
4-3. 危険負担
- 売買契約から引渡しまでの間に、火災などで誰の責任でもない損害が発生した場合、民法では買主が代金を支払うことになっています。
- 実務では、契約を解除できる特約をつけるのが一般的なので、売買契約書に明記しておきましょう。
4-4. 引渡時期
- 買い替え先の入居時期にあわせるなど、引渡しのタイミングはしっかり計画しておきます。
- 万が一、引渡しが遅れる場合は、買主に待ってもらう代わりに売却価格を値引きするなどの交渉が必要なこともあります。
5. 物件を引き渡す
**「引渡し」**とは、鍵を渡すなどして買主が物件を占有できる状態にすることです。通常、所有権移転登記と同時に行われ、買主は売主に代金を支払います。
5-1. 物件の最終確認
- 契約書の内容通りに仕上がっているか、荷物がすべて搬出されているかチェックします。
- 未完成だった工事などがある場合は、引渡し前に売主・買主が立ち会ってしっかり確認しましょう。
- 固定資産税や都市計画税、公共料金などは引渡し時点で精算します。マンションなら管理費や修繕積立金、駐車場代なども清算し、管理会社に通知します。
5-2. 書類や鍵の引渡し
- 建築確認書類や検査済証(新築時)、管理規約・使用細則(マンション)、物件の鍵、図面などの資料を買主に渡します。
- 登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的。
- 売主は「権利証(登記識別情報)」「委任状」「印鑑証明書」などを司法書士に提出し、所有権移転登記を行います。
- ローンが残っている場合は、買主からの残代金を受け取って完済し、抵当権抹消登記の書類を金融機関に用意してもらいます。
以上が、住まいを売却するときの主な流れです。
不動産会社との信頼関係や契約内容の理解がとても重要なので、疑問や不安があれば遠慮なく相談するようにしましょう。自宅を売却して新たなステージに進む皆さまの参考になれば幸いです。